相次ぐ悲劇 「夫に似てかわいくない」 親のストレスはけ口(産経新聞)

 また自分の子供を死なせた親が逮捕された。3日にも奈良県桜井市で5歳の長男に食事を与えず死なせた両親が逮捕されたばかり。育児放棄(ネグレクト)、虐待…。幼子が犠牲になる事件は後を絶たない。

 「愛情がわかなかった」「子供がかわいくない」

 奈良県警に保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された両親は、長男に食事を与えなかった理由を、県警や児童相談所にこう話した。同様の理由で虐待するケースは最近では珍しくないようだ。「時代とともに親が変わってきている。一概にはいえないが、未熟な親もいる」。児童虐待対策などを行っている「子どもの虹情報研修センター」の川崎二三彦研究部長はそう話す。

 警察庁によると、昨年1年間で摘発した児童虐待は過去最高の335件。平成11年の2・5倍以上だ。このうち、児童に暴力を加える身体的虐待が234件、性的虐待が91件だが、食事を与えないなどのネグレクトも10件あった。しかも摘発されているのは、大半が実父や実母だ。

 「児童虐待の多くは、夫婦仲の悪化や貧困など、親にさまざまなストレスが重なった結果、起きる」。川崎部長は解説する。捜査関係者によると、奈良県の事件で逮捕された母親も「夫婦仲が悪く、息子の顔が夫に似ているので、かわいくなかった」と供述しているという。

 桜井市によると、両親は長男の1歳6カ月健診や3歳6カ月健診も受診させず、電話をしても「家族の介護で受診に行けない」と答えるばかりだった。川崎部長は「子育ての援助者がいないことは、虐待の大きな原因になる。地域社会のつながりが希薄になり、相談する人もいない。虐待をしている親らは次第に、声をかけられても拒否するようになる」と話している。“生き地獄”を強いられる子供のSOSはなかなか届かない。

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